某ディーラーからBMW R nineT用のスピードメーター・プラスについて質問が寄せられたので、これを機に説明を致します。

スピードメーター・プラスは、R nineTの年式によって違うバージョンを注文する必要があるのか?
スピードメーター・プラスのバージョンの違いは何か?

スピードメーター・プラスの開発は、BMWが推し進める技術革新と、それに追いつくために修整を重ねた複雑な経緯があります。
このブログ記事は、R nineTってキャワイイ、ヤバイ、萌え、カッコイイ、SNS映えする、などといった流行や、人の意見に振り回されるオーナー向けの内容ではないことを前置きをしておきます。
スピードメーター・プラスの基本機能は、CANバス(ECU)内にある情報をメーターのディスプレイに表示させる仕組みです。従って、危険を伴うCANバスのコーディングや設定の変更は不要ですので、安心してご利用頂けます。

開発のきっかけ
ご存知のとおり、Pure、/5、Scrambler、Urban G/Sといったシングルメーターでは、ギア表示やエンジン回転数といった表示がされないので乗っていてとても不便です。
一方、ロードスター(通称R nineT無印)やRacerのデュアルメーターではギア数もエンジン回転数も表示されています。
これはつまり、エンジン情報を司っている共通のCANバス (ECU) はこういった色々な情報を持ってはいるが、肝心のスピードメーター本体のディスプレイにはそれを表示する機能が無いということです。
それならば、ソフトウェアで既存のシングルメーターのディスプレイにギア数やエンジン回転数を表示してみようと思ったのが、スピードメーター・プラスの開発のきっかけです。それが2019年のこと。

ブラックボックスの解析
とはいえ、CANバスの中身はメーカーの方針でブラックボックス化されているので、BMWに中身を問い合わせても回答は得られません。
そこで、車輌にテスターを接続して信号を読み取りながら解析を重ねました。
しかし、アレをやれば、コレがだめ。
コレをやると、アレがだめ。
そんな事の繰り返しでした。
そして、ようやくギア表示とエンジン回転数の表示ができるようになったけれど、それだけでは知恵が無い。
そこで、ユーザー本位の付加価値を追加し、2020年秋頃に完成したのが実質的なバージョン1.0です。
開発者からそれを受け取り、自分の車輌に取り付けて試してみると、目から鱗が落ちるようでした。
それがこの動画です。(約1分)
※現行版とは表示が一部異なります。
スピードメーター・プラスのバージョンの違いは何か?
これは、ユーザーはもちろん、ディーラーも知らないBMW主導によるCANバス中身の変更が深く関係しています。
世間では、R nineTのCANバスは、2021年モデル以前と以降で分けるとされていますが、実際は違うようです。
独自の解析によると、大ざっぱに分けて3種類ありました。
CANバス バージョンA(2019年モデル以前)
CANバス バージョンB(2020年モデル)
CANバス バージョンC(2021年モデル以降)
※1:CANバスのバージョンは非公開のため、便宜上バージョンA、B、Cと分類
R nineTの年式とスピードメーター・プラスのバージョンの適合を表で表すと下記の通りです。

かなり重いハナシ
以下は、R nineTの外見だけではなく、技術的なことも知りたい、といった求道者向けの内容です。

初期のスピードメーター・プラスの開発は、当時最新モデルのCANバス バージョンA(2019年以前)の複数のR nineT車輌で行いました。
スピードメーター・プラス(V1.1)の販売を開始したのが2020年の11月です。2020年モデルは前年のマイナーチェンジとされていました。
ところが、その2020年モデルにスピードメーター・プラス V1.1を取り付けたところ、ディスプレイ表示に不具合が起きました。そしてその調査がきっかけで、BMWが密かにCANバスのバージョンをAからBに変更したことに気がつくことができました。
これをきっかけに、2020年モデルのCANバス バージョンBに対応する新しいファームウェアを搭載したV1.2が完成しました。
そしてご存知のとおり、R nineT2021年モデル以降は、従来のモデルとは大きく異なる仕組みが導入されています。この新しいCANバス バージョンCに対応したのが V1.3です。
以上が、R nineTの技術進化に対応した、スピードメーター・プラスのバージョンの変更履歴です。

ご注意下さい
ネットで見つかる私的なブログや、SNS情報などを真に受けてCANバスの設定変更を試みたり、コーディングの変更は大変危険ですので絶対にお止め下さい。
スピードメーター・プラスの表示や動作の不具合の原因は、コネクターの不確実な接続や緩みです。上記のCANバスバージョンの非互換性の問題を除くと、瑕疵率は0.6%未満です。(2022年2月現在)
現在販売しているスピードメーター・プラスはV1.3です。これは全てのモデルのCANバスに対応しているので安心してお使い頂けます。(2022年2月現在)
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